医療

既に実現している最新の癌治療!こんなにも進んでいることを知ってほしい!【2019/03更新】

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癌は日本人の死亡原因の圧倒的第1位となってしまいました。。なんと日本人の半分が死ぬまでに一度は癌にかかり、1/3はそれが原因で死亡するという統計があります。あなたの周りにも癌が原因で亡くなった人もいるのではないでしょうか。

参考厚生労働省大臣官房統計情報部『平成29年 厚生労働統計のあらまし』 死亡章

悲観しそうになりますが、最新の癌治療には目を見張る進歩があります。

これまでのように副作用だらけの苦しい治療をした末に死んでしまう。。そんな話は過去のものになるかもしれません。

 

最新の癌治療はよく話題になりますが、ただのまとめではなく深く突っ込んだ内容になりますので、最新の癌治療についてよく知りたい方は是非読んでみてください!

 癌とその治療の難しさ

癌とは正常な細胞としての機能を失った細胞で、無限に増殖するというゾンビのような性質を持っています。

癌細胞は自分で自分に増殖するようにという命令をかける仕組みを持っていて、これによって増殖し続けます。

あまりにも増殖力が強いために、癌の塊から癌細胞が剥がれて血液やリンパ液に乗って別の場所に移動すると、そこでもまた増殖して全身を蝕んでいきます。これが俗に言う”転移”ですが、この転移性のために癌の治療は困難を極めます

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話は少し変わりますが、癌細胞は健康な人間でも1日に5000個程度体内で生まれていると考えられています。癌細胞は遺伝子の異常により発生しますが、毎日の細胞分裂の際にこのような遺伝子の異常は必ず出来てくるので、結果として毎日癌細胞ができることになります。

それでも癌にならないのは、免疫細胞のチェックがあるからです。癌細胞を見つけると殺してしまう殺し屋の役割を担う免疫細胞がいて、これの働きで私達は癌にならずにすんでいます。

 

ところが、加齢や何らかの原因で免疫力が落ちると、このチェックをスルーしてくる癌細胞が出てきます。これがしばらく続くと、癌細胞は増殖を始めます。これが癌の始まりです。

癌はある程度大きくなると、免疫が気づいてやっつけてくれそうですが、実際にはほとんど免疫による攻撃は起こりません。

これは近年の研究でわかったことなのですが、癌は大きくなると免疫の攻撃を抑える物質を出して、免疫細胞の攻撃から逃れます。(正確にはPD-1/PD-L1経路

ここまで書いてきたように、癌細胞は”免疫細胞からの回避”によって生きながらえ、その”増殖力による転移性”のために治療が大変難しい病なのです。

余談ですが、2018年京都大学の本庶佑先生のノーベル医学生理学賞の受賞理由はこのPD-1を発見したことです。

この機構によって癌が増殖することがわかったことはノーベル賞にも値するほど、癌治療にとって重要な発見だったのです。

 

これまでの癌治療ができること、できないこと

癌の三大治療法は①外科的療法(手術)②放射線療法③化学療法(抗癌剤)による化学療法と言われています。それぞれメリットとデメリットがあるのですが、詳しく見ていきましょう。

①外科的療法(手術による治療)

一般の人であれば、癌治療といえばまず手術を思い浮かべるのではないでしょうか。手術による癌部位の切除は今も昔も非常に効果のある方法で、完治を望むことができる強力な手法です。

手術の最大のメリットは癌細胞を物理的に除去することによって、他の方法では治療が難しい大きな塊となった癌を根本的にごっそり取り除くことができる点です。最近では内視鏡によって、傷口も少ない手術が可能になって来ており、その進化には目をみはるものがあります。

そんな手術にもデメリットは存在します。それは転移癌がある場合には治療が著しく難しくなることです。転移癌は目に見えないくらい小さいサイズのこともあります。そのような場合は全て見つけて切除することは不可能ですので、手術による治療が有効なのは、まだ転移していない比較的早期発見の癌に限られます。

またいくら技術が進んだとは言え、身体を切り裂く手術は体力を奪います。患者が高齢である場合や体力が無い患者の場合には手術自体が負担となり施術することができません。

 

②放射線療法

放射線による治療も有力な選択肢の1つです。放射線療法には外部から放射線を照射する外部照射療法と、体内に放射能を埋め込んで体内から放射線を当てる内部療法があります。前立腺癌などでは内部療法が有効といわれていますが、通常は外部療法を用います。

ひとえに放射線と言っても様々な種類があることに留意が必要です。下にその種類を示しますが、本当に色んな種類があります。

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近年は特に重粒子線による治療が注目を集めています。重粒子線療法とは、非常に小さな粒子を光に近い速度で打ち込むことで治療する方法です。この治療は、早期発見の癌であれば手術と同程度の治癒能力があるとされています。それでいて、手術の様な身体に対する侵襲は無いのがメリットです。また綿密な計算のうえ、放射線を癌にだけ当てるため全身への副作用は少ないのも魅力です。

デメリットとしては、保険適応されている癌が限られていること、また保険適応であっても非常に高額な治療費がかかることです。また、全身に転移したような癌にも使えません。1つ1つの塊に放射線を照射するのは非常に時間とお金のかかる操作で、全身に転移した場合現実的に対応できないのです。また胃がんのような常に動いている臓器が相手の場合には標的を定められないので使用できません。

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(上:重粒子線治療室のイメージ図)

 

③化学療法(抗癌剤治療)

化学療法は言わずと知れた抗癌剤による治療です。抗癌剤には様々な種類がありますが、基本的には静脈から注射や点滴によって癌細胞を殺す働きのある薬剤を注入します。

最大のメリットは、薬剤が全身に広がるため、全身に転移したような癌に対しても効果を発揮することが出来る点です。どんな小さな転移癌であっても、薬剤が届く限りは有効なのです。そのため現代癌治療のメインとなっていて、手術や放射線療法と並行して使われています。

その最大のデメリットは抗癌剤による副作用です。基本的に癌に対して毒性のある薬は健康な細胞に対しても毒性を示すので、それによる全身性の副作用が避けられません。これは患者のQOLを引き下げる大きな問題となります。

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とは言え、現在の治療法で転移癌まで全身の癌を叩けるのは抗癌剤しかありません。ですので、できるだけ副作用が小さく、効果が大きく、短期間で治療が終わるような化学療法が待望されています。

ここまで進んだ!最新の癌治療を一挙に紹介します。

ここまで、現在の癌治療とその問題点について解説してきました。その中でも化学療法(抗癌剤)が唯一、転移癌を含めた全身性の癌を叩ける方法だということを書きました。ここからは、そんな化学療法を中心に最新の癌治療の解説をしていきたいと思います。

ドラッグデリバリーシステム

ドラッグデリバリーシステム(DDS)という言葉は聞いたことがあるでしょうか。 言葉から想像出来る通り、薬を必要なところへ届ける技術のことです。つまり、抗癌剤を注射で撃ちこめば、癌のところだけに薬剤が集まる夢のような治療法のことを言います。

そして、この技術は既に実現しています。

仕組みはいたってシンプルです。癌は増殖するために新しく血管をどんどん自分の周りに張り巡らします。しかし、癌は急成長するため突貫工事で血管を作るので、その血管には正常な血管には無いような小さな穴が沢山開いています。その穴を抜けるような小さいカプセルに薬を入れてやれば癌だけに薬が届くことになります。(これを専門用語でEPR効果といいます)

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上の画像にもあるように、癌細胞周辺の血管から漏れ出す程度の大きさの薬を入れてやれば良いのです。実際のところその大きさは10億分の10〜30メートル程度(10nm-30nm)とわかっています。どのくらい小さいかと言うと、薬を入れるカプセルが人間程度の大きさだとすると、地球の直径がちょうど1mになるくらいの小ささです。

厄介なのがこの大きさよりも小さければ腎臓によって取り除かれてしまい、それよりも大きければ免疫細胞が分解してしまうということです。極めて精密にサイズを制御したカプセルを作らなければなりません。

この技術は既に臨床段階にあります。この研究で世界のトップを走っているのが、東京大学の片岡一則先生です。片岡先生は水中で自動的にこの程度の大きさになるナノミセルと呼ばれるカプセルを応用して、癌治療に取り組んでいます。

参考:文部科学省 次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム

そして、この原理を利用した抗癌剤が既にDOXILとして市販されています。

現在の課題は繰り返し投与することで、身体がこのカプセルを異物と認識して破壊する現象が起こることです。これを避けるための研究もかなり進んできています。また普通の抗癌剤に比べて価格が高くなってしまうのは否めません。今後ドラッグデリバリーシステムによる癌治療はメジャーなものになっていくでしょうから、そうすれば価格も今よりずっと安くなるでしょう。

抗体医薬品

抗体医薬という言葉を聞いたことがあるでしょうか。抗体というのは人の身体の中で免疫の中でも大きな役割を担っているもので、下に示すようなY字形をしています。

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1つの抗体は基本的に付き1種類の物質を特異的にくっつきます。これを応用して、癌細胞だけにくっつく様な抗体を使おうというのが抗体医薬品の基本的な考え方です。抗体が付いた癌細胞は免疫細胞が処理できるようになるので、これによって癌を退治しようというのです。(参考:ADCC/CDC活性)

考え方としては1つ前に出てきたドラッグデリバリーシステムと似ていますが、ドラッグデリバリーシステムでは穴から薬が出て行くという方法だったのに対して、抗体医薬ではどのような状況でも癌細胞だけを認識することができます

余談ですが薬として人に使える抗体はヒトモノクローナル抗体という特殊なもので、この作り方を発明したGeorges Jean Franz KöhlerとCésar Milsteinはいずれも1984年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

抗体医薬品に関して驚くべきデータがあります。下の表なのですが、これは世界で売れた医薬品の売上高ランキングです。

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なんとトップ10のうち半分が抗体医薬品であることがわかります。抗体医薬品のもたらす効能と期待はそれだけ高いということです。

抗体医薬品の最も大きいデメリットは、やはり価格です。抗体を製造し、人に打ち込めるくらいに純粋なものにするのには手間がかかるのが現状です。そこで最近では後で紹介するアプタマーと呼ばれる薬が抗体に代わる医薬品として開発されています。

ADC薬 (Antibody Drug Conjugate; 抗体薬物複合体)

ADC薬という名前は医学や薬学、生体化学を専門にしていない方は聞いたことが無いと思います。実はこれは抗体医薬品の一種ですが、抗体を更にパワーアップさせた薬なのです。具体的には抗体に抗癌剤がくっついたような形をしています。

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先ほど見た抗体に赤色で示した抗癌剤が付いた構造をしていて、抗体が武装化されています。普通の抗体医薬品では、抗体が癌細胞にくっついた後に免疫細胞が癌細胞をやっつける流れでしたが、このADC薬では抗体部分が癌細胞にくっついた後に、懐に携えている抗癌剤を癌細胞に送り込んで癌細胞を破壊してしまいます。さながら敵陣に突っ込む兵士のようですね。ご想像の通りADC薬は一般的に普通の抗体医薬よりも強い抗癌活性を示します。

ADC薬は抗体を用いているため、癌細胞に特異的にくっつくことができます。これによって抗癌剤が健康な細胞にまで及ぶことは少なくなるので、副作用は大幅に抑えられます。ですので、普通は副作用が強すぎて到底薬として使えないような、超強力な抗癌剤も使用することができます。むしろADC薬においては抗癌剤は強力であるほど良いとされています。

このように抗体を抗癌剤で武装することによって抗体医薬品では効果の薄い癌に対しても有効なデータが得られることがわかっています。

現状ADC薬として販売されているのは、マイロターグ(急性骨髄性白血病)、カドサイラ(乳がん)、アドセトリス(ホジキンリンパ種・全身性未分化リンパ腫)の3種類で、特に後ろの2つについては2013年と2014年に承認された新しい薬です。ですが近年その効果が注目を集めていて、続々と研究が進んでいます。

デメリットとしては抗体医薬品と同様に抗体を用いているので価格が高くなることが挙げられます。ですが、それを補って余りある効果が得られるものと期待されています。

参考:http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2014/036-046.pdf

→国立医薬品食品衛生研究所の報告書なので、比較的わかりやすいですが少し専門的です。

参考:Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 3796-3827

→専門家向けの内容です。最近のADC薬についての情報が非常にわかりやすくまとめられているレビューです。

Angew. Chem. Int. Ed.
2014
,
53
, 3796 – 382

アプタマー医薬品(核酸医薬品)

ここまで紹介してきた抗体医薬品やADC薬は抗体を用いているため、効果は高いのですが、高価だったり開発に大掛かりな設備が必要だったり、また 開発に時間がかかったりするのが難点です。その難点を払拭するべく、近年はこのアプタマー医薬品に注目が集まっています。

アプタマーというのはDNAを構成する物質と同じものからできていて、様々な形を取ります。1つのアプタマーが取る形は決まっていて、この決まった形と合う物質だけが、アプタマーと結合できます。(実際には様々な物質からアプタマーを作ることができます。DNAを構成する成分で作ったアプタマーのことを核酸アプタマーといいます。)

もうおわかりですね?癌の細胞につくアプタマーを作れば、これを抗体の代わりに使うことができます。

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上の図では標的は癌細胞ではなくタンパク質となっていますが、実際のアプタマーでは癌細胞本体ではなく、その細胞表面にあるタンパク質を狙うためです。

このアプタマーは、抗体よりも標的にくっつく力が強く、それでいて抗体よりも安価に作れる利点があるため、抗体医薬に代わるものとして広く研究されています。

既にマクジェンという製品名で加齢性黄斑変性症の治療に用いられています。

現状では血液中に入れると素早く分解されてしまうというデメリットがあるのですが、上で紹介したドラッグデリバリーシステムのカプセルの中にこのアプタマーを入れることで、癌細胞まで安全に届けようという複合化研究が進められています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。癌は死亡者の最も多い病気ということもあって、その研究の速度は目を見張るものがあります。こうやって頑張って書いた記事も数年後には過去のものとなっているでしょう。

この記事が情報を必要としている人の役に立ったなら嬉しいかぎりです。頻繁に情報を更新していくので、チェックお願いします。

尚、癌の免疫療法については別の記事としてまとめる予定です。

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参考:新たなるバイオ医薬品開発 | Nature 日本語版 Focus | Nature Publishing Group

ネイチャーによって現状のバイオ医薬品について解説された記事です。端的にまとめられていますが少し専門的です。

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